「あなたはフェミニストですか?」という問いに「はい」と答える人はどれくらいいるだろうか?
「フェミニストってわけじゃないけど、、、」や「フェミニストと言えるほどでもないけど、、、」という枕詞が付いたり、むしろ嫌悪感を持って「違う」と答える人もいるのではないだろうか?
今でもよく覚えているのだが、以前私も同じ質問をされて戸惑ったことがある。
2012年に仕事を辞めて、博士課程に進学しようと受験した際に、口頭試験で質問されたのだ。
会社で仕事をする中で、女として生きることへの違和感を感じ、女性学やジェンダーを学びたいと思ったことによる受験だった。「悪気なく」でてくる同僚や上司からの女性に対する差別発言や男性中心の社会のルールに対して、「これらの理不尽と闘うにはもっと知識が必要だ」と思っての決断だった。
にもかかわらず、口頭試験で聞かれた“Are you a feminist?”の問いに対して、”Yes.”と答えられなかったことを強く覚えている。
今では自信をもってそうです、と言えるはずの答えに、なぜその時にためらったのだろうか。
【フェミニストってすごそう?】
一番大きな理由は、フェミニストが何なのか定義できていなかったことだろう。「男女に限らずすべての人が公平に平等に生きられる社会に賛成ですか?」と聞かれたなら、「はい」と答えていただろう。しかし、その当時は、フェミニストと名乗る人に会ったこともなく、フェミニズムがどういうものなのかもよく理解していなかった。そして、「なんかフェミニストってすごい戦いをしている強い人たちの総称っぽい」というイメージが先行したことで、「私はそういうわけじゃないんですが、、、」という枕詞を付けたのを覚えている。
その後、勉強していく中でフェミニストに対して「男嫌いでブスな女のヒステリー」といった過激なイメージが植え付けられたことで、“I am not a feminist, but,,,”と答える女性がとても多いことを知った。
私の場合は、なんとなくフェミニストと名乗る事が、「過激だからいや」ということよりも、「名乗れるほどのことはしていないから」と感じていたように思う。
「フェミニスト」と名乗るには、知識があったり、研究をしていたり、活動をしていなければいけないんじゃないか、という意識は今でも答えづらそうにしている人に感じたりする。
しかし、女性が抑圧されないことが当たり前と思っているなら十分にフェミニストであり、そう名乗る事をためらわないでほしいと思う。
【自分をカテゴライズすること】
もう一つ、20代の私は、自分を何かのカテゴリーに入れられることを異常に嫌っていた。「コンサバ女子」とか「家庭的」とか「キャリアウーマン」などというカテゴリーに当てはめられて語られることに大きな違和感を感じていたからだ。
それらのジェンダー意識に基づいたカテゴリー分けは、今でも好きではないが、それとフェミニストであると名乗ることは全く違うな、というのは勉強し始めて気付いたことだ。
「ミソジニー」や「ホモソーシャル」といった言葉はだいぶ一般的になってきたように感じるが、「対幻想論」や「マルクス主義的フェミニズム」といった専門用語に初めて出会ったときは読書が全く進まず、日本語でこんなに理解ができないのかと悲しい気持ちになった。
このようなワードをすべて使いこなすことは、研究者として生きていかない限り、必要とされることはないだろう。けれども、これらの言葉を使うだけで、社会的背景や歴史的背景を含んだ現象を説明できることは共通の知識をもった人には非常にわかりやすく簡単だ。
「私は男女の不平等に反対しています。現在の日本社会ではまだまだ女性が弱い立場にあり、このような差別は是正しなくてはいけないと思っています。しかし、男女の性差をなくすべきだとは思っておらず、男性が作った社会システムにおいて女性が平等に扱われることを望んでいるわけではなく、女性が社会進出をしていくなかでそもそもの社会システムを作り直していくことを望んでいます。」というよりも、「私はフェミニストです」という方が簡単だ。
けれども、「フェミニスト」という言葉自体も、意外とまだどういうものか知られていないんだな、というのも残念ながら感じる。だからこそ、それを「知らない」「理解していない」ことで「自分はフェミニストと名乗るには不十分」と感じてしまう人もいるのではないだろうか。
ジェンダーを問わず、人々が差別されない社会を目指すこととフェミニズムの思想はとてもよくマッチする。「フェミニズム」って怖くも難しくもないんだということが少しでも浸透していけばいいなと思う。