何をもってフェミニスト映画と呼ぶのかというとそこでひとつ議論ができそうである。が、今回は、独断と偏見で私が最近見た映画で、インスパイアされたものを紹介したい。
Thelma and Louise (1991)(おすすめ度★★★★)
“ハスラー”や“オーシャンズ8”といった女性たちが仲間とともに犯罪者になることで、エンパワーされていくといった映画の金字塔といえばテルマ&ルイーズかなと思う。ロードトリップの途中にテルマをレイプしようとした男を殺してしまったことで始まる女二人の逃亡劇である。旅を続けることで、初めは保守的でおとなしく、夫や男性のいいなりだったテルマが、どんどん強くなっていくところが見どころだろうか。初めは花柄のドレスばかりを着ていた彼女が、金髪をバッサリ切ってロックなTシャツ姿に変容していくのも、彼女の内面の変化を表していて面白い。
多くの映画やドラマで引用されるほどの、クラシックな作品なので、アメリカ映画やドラマ好きであれば、他のドラマなどで出てくる引用がわかって面白いかもしれない。
If These Walls Could Talk 2 (2000) (おすすめ度★★★★★)
これはHBOが作成したテレビ映画だ。60年代、70年代、2000年代を比較しながら、レズビアンの生き方を時代とともに描いた素晴らしい作品である。60年代にパートナーを亡くした初老の女性が、同性婚の権利が認められていないために病院に付き添えなかったり、家を追い出されたり、パートナーであることを公に言えないという葛藤や悲しみが描かれているところから、変わっていく時代や女性たちの生き方が生き生きと丁寧に描かれている。
特に、2000年代に登場するレズビアンカップル役を演じるのは、シャロン・ストーンとエレン・デジェネレスであることも特筆すべきだろう。
エレンと言えばもはや“The Ellen Show”のホストとしてだれもが知っている有名コメディアンだが、1997年にテレビでレズビアンであることを告白している。彼女のスタンダップコメディでは、カムアウトしたことによってキャリアが危ぶまれたという話も出てくるほど、レズビアンであることのカムアウトは当時まだ一般的ではなかったようだ。その彼女が女優としてレズビアンカップルを演じており、精子バンクを経て二人で妊娠を目指す様子はとてもエンパワーリングだった。
Eighth Grade (2018) (おすすめ度★★★★)
8年生というタイトルのこの映画は、日本でいう中学2年生の女の子の日常をセンシティブに描いている。内向的で自分に自信がないながらも、Youtubeビデオをアップしたり、年上の先輩に憧れたりと思春期の心情を捉えた映画だ。これまでのティーン映画といえば、Mean GirlsやCheers(ちょっと古いかもしれないが、、)といったキラキラしたスクールカースト上位の女の子の生活を描くものが多かったが、この映画ではほろ苦い思春期の自我や葛藤を丁寧に描いている。
特に、アメリカ社会において「内向的(introvert)」であることは、とてもネガティブにとらえられることが多い。自己主張や意見がまっすぐ言えない主人公の女の子のがYoutubeの世界でだけ理想の自分を演じながら友人や親との関係性を見つめなおしていく、素晴らしい映画だと思う。
Midsommar (2019) (おすすめ度★★★)
この映画がフェミニスト映画なのかというと、議論が分かれそうではある。
アメリカで人類学を研究している学生たちが、スウェーデンの村の祭りを研究対象としてフィールドワークに出かけるなかで、祭りの生贄にされるというホラー要素の強い映画だ。
スウェーデン政府からこんな祭りは実在しないし、悪影響を及ぼすとクレームがでるほど、残虐に描かれているので、そういう映画が苦手な人は気を付けてほしい。
さて、主人公の女性は精神疾患を持っており、不安定なところを彼氏がいつも支えているという描写から物語は始まる。彼女が泣いて電話をしてきたりするのを、彼氏の友達はよく思っておらず、別れたほうがいいのではとアドバイスをするが、彼は自分が支えてあげなくてはと思っている。一方で、彼女の誕生日を忘れたり、何の相談もなくスウェーデン旅行を決めたりと、二人の関係性は非対称であり、彼が優位に動いている様子が前半のアメリカでの生活ではうかがえる。しかし、スウェーデンの祭りを通して、二人の関係性が変わっていくのだ。彼女はどんどん祭りのシンボル的に扱われ、悩みや精神的な問題から解放されていくなかで、彼からも解放され自立していく様子がうかがえる。さらに、よくあるホラー演出とは異なり、男性キャラクターばかりが死んでいく演出も、少し変わっていて面白い。
Hustlers (2019) (おすすめ度★★★)
冒頭のテルマ&ルイーズに繋がるような、夜の仕事をする女性たちが男性客に薬をもって荒稼ぎするという犯罪映画(そういうジャンルがあるのかよくわからないが)である。
年齢や出身、肌の色の違う女性同士の強い絆を描きながらも、繋がり続けることの難しさを描くシスターフッドに感動させられる。
特に、強くて美しいジェニファーロペス演じるラモーナに憧れ、慕うようになるデスティニー(コンスタンス・ウー)の友情関係は、ロールモデルのいる安心感や、それが変化したときに生まれる葛藤など共感できる部分が多い。
おすすめ度は個人的な観点でつけてみたが、どの映画も自信をもってお勧めできる素晴らしい作品ばかりなので、時間があるときにぜひ見てみてほしい。