ジェンダー平等は時代遅れ?

テレビ朝日の報道ステーションCMが炎上したそうだ。

若い女性が「久しぶりに会社にいったら先輩が赤ちゃん連れてきて、すっごいかわいい」とか、「どっかの政治家がジェンダー平等とかスローガン的に抱えてるけど、なにそれ時代おくれって感じ」とか「化粧水買っちゃった、ちょっといいやつ。消費税高くなったよね、でも国の借金って減ってないよね」というセリフを話した後に「こいつ報ステみてるな」というテロップがでるCMだ。

多くの人々がこのCMに対して声を上げ、現時点ではテレビ朝日は謝罪のうえCMを削除している。

以下がその謝罪文章だ。

「今回のWebCMは、幅広い世代の皆様に番組を身近に感じていただきたいという意図で制作しました。ジェンダーの問題については世界的に見ても立ち遅れが指摘される中、議論を超えて実践していく時代にあるという考えをお伝えしようとしたものでしたが、その意図をきちんとお伝えすることができませんでした。不快な思いをされた方がいらしたことを重く受け止め、お詫びするとともに、このWebCMは取り下げさせていただきます。」

さて、この件について3点、感じたことがある。

 

①若い世代や女性が社会問題を話すことへの軽視の視点

これに関しては、CMのトーンを見てもらった方がよくわかると思うのだが、今は削除されてしまっている。(探せばでてくるかもしれないが)

若い女性が知識を話すことに対して、「こいつ報ステみてるな」というテロップは、人をバカにしているように映る上に、会話を深めようとする姿勢が全く見えない点で問題があると感じる。報道ステーションだろうと、研究論文だろうと、そこで得た知識を人に話したり、深めたりしようとする人に対して、「その情報って、あの番組や本で得たやつね」という上から目線で返されたらどうだろうか?CMに出てくる女性の話は、内容の賛否はあれ、とても深堀できるトピックである。例えば、先輩が会社に赤ちゃんを連れてくるというようなことは、今までの会社のシステムでは難しかったことであろう。彼女の勤めている会社が、子連れて出勤できる制度をつくっているのか、コロナでリモートが多くなったため、出勤スタイルが変化しているのかなど、会話の糸口はたくさんあるように思う。それを「あ、報道ステーションの知識ね」と返されたら、それ以上対話は広がらない。

若者や女性が知識を話すことを軽視しているだけではなく、社会的な問題を話すことすらバカにしているような作りになってしまっていることが残念に感じた。

 

②ジェンダー平等が時代遅れという特権階級の視点

ジェンダー平等が時代遅れ、と本当に思える社会だったらどんなに良いだろうと感じる。日本はジェンダーギャップ120位の国です、と言われて、「あぁ、やっぱそうだよね」と思う人と「どこが?平等じゃん」と思う人の分断が大きいように思う。男性に限らず、女性でも後者のように思っている人は結構いるのではないだろうか。差別が存在しないと感じられることは特権である。かつて、私も学生時代は「女だからって差別されたことなんてない」と思っていた。それは、単に自分自身が恵まれた環境にいたうえに、「女性とはこうあるべき」という社会的規範を内在化していただけの話だと、今になったら思う。

謝罪文にあった「ジェンダーの問題については世界的に見ても立ち遅れが指摘される中、議論を超えて実践していく時代にあるという考えをお伝えしようとしたものでしたが、その意図をきちんとお伝えすることができませんでした。」という説明の、「議論を超えて実践していく」ことがどう「ジェンダー平等って時代遅れ」という発言につながるのかはとても謎である。最近では企業の社会的責任なども大切だとされている中で、このCMは報道番組においてCMを制作する人々が特権に無自覚なことを露呈してしまったのではないだろうか。

 

③謝罪して撤回よりも教育の充実を

先ほどの、「ジェンダー問題について議論を超えて実践していく」ことが、どのように「ジェンダー平等って時代遅れ」という発言につながるのかが全く見えないので、いったいどういう意図だったのかが全く分からないことだけではなく、このようなCMや発言があった際に「謝罪して撤回」すればそれで丸く収まるようになってしまっているのもどうかなと思う。個人的には撤回するよりも、学んでほしいと思う。なぜ、これを不快に感じる人がいるのか。どのような観点でまずかったのか。自分が見えていなかった世界はなんなのか。

間違ったり、知らずに差別してしまったりすることは、どんな人でもしてしまう可能性があると思う。そうしたときに、一度立ち止まって、どのような点において相手が不快に感じたのかを考えて、学ぶことがとても大切なのではないだろうか。もちろん、謝罪することは大切だが、謝って撤回して終わりだと、また同じ間違いを繰り返すことは目に見えている。理想なのは、学校教育などでもっとジェンダー教育がされることだとは思うが、最近ではわかりやすくジェンダー問題を扱った本もたくさん出ている。特に、責任ある立場にあったり、発信力のある人は知らない世界について学んでみることをしてみてほしいと思う。