「私は本屋が好きでした」という本を読んでいて、全く内容の本質とは違う話を考え始めたので、図書館の魅力について書いてみたい。
ちなみに、「私は本屋が好きでした」は、ヘイト本と呼ばれるものが作って売られるようになるまでの舞台裏を描いたものだ。本屋の社会的影響力などを考えさせられる面白い内容となっている。
が、今回はこの本の内容とはあまり関係がない。本にまつわる話として、図書館の魅力を考えたいと思う。
私は幼いころから本が好きだが、あまり「本屋」に通う経験はしてこなかった。
生まれ育った家から歩いて3分の所に図書館があったのも大きいだろう。
小さいころから図書館に遊びに行っていたので、図書館で勤めるお姉さんにもかわいがられていた。学校でも、休み時間や放課後には図書館に行き、本を読んだり、友達と面白い本を教え合ったりする場所が図書館だった。
大学に入ってからは日本の大学では教科書を買うことが当たり前だったので、「教科書」としての本は買っていたが、アメリカの大学院では院生であれば50冊以上本を借りることができるし、期限も更新すれば1年以上手元に置いておくことができるので、ほとんど本を買うことなく過ごすことができた。
本屋では最近の話題の本や、興味を引くレイアウトで本が平積みで並んでいるため購買意欲をそそる。一方図書館では、ほとんどの本が棚に並べられているため取り出さないと表紙が見えず、「こういう本を読みたい」と思って探さなければなかなかお目当ての本にたどり着けない。
けれども、私自身、お金がない学生時代を過ごしたり、よく引っ越しをするため本を所有することがとても大変だったので、図書館にはいつもお世話になっていた。
【いくら読んでも無料】
当たり前だが、図書館の本はいくら読んでもタダだ。そして住んでいるほとんどの地域には図書館があり、住民であれば登録も無料でできる。読みたい本がない場合でも、近くの図書館と提携していて取り寄せをしてくれたりもするので、聞いてみると意外と手に入ったりもする。貸出期限があるので、それは守らなくてはいけないが、2週間借りて読まない本はきっと所有していても読まないだろうから、買っても同じだろうと私は思っている。興味のある分野だけではなく、全く知らない分野の本まで無料でアクセスできることは本当にすばらしいと思う。
【意外とほしい本は買ってくれる】
これは地域や図書館の予算にもよると思うのだが、読みたい本がない場合に依頼すれば意外と買ってくれることが多い。購入手続きには時間がかかるが、あまり購入依頼を出す人が少ないのか、欲しい本の購入を断れたことはあまりない。もし地域の図書館に予算がない場合は、府立や県立の図書館で探したり依頼してみてもいいかもしれない。学生であれば大学の図書館はほぼほぼ購入してくれるだろう。
東京在住者であれば、国立国会図書館に行けば日本で発行されている本なら見つけることができる。
【お気に入りの棚を見つける】
図書館で本を探すときに、私が一番にしていることは、お気に入りの棚を見つけることだ。ほとんどの図書館ではジャンルごとに棚が分けられている。海外文学、日本文学、社会史、歴史、福祉、ビジネスといったようにどのジャンルの棚に自分の好きな本があるのかをはじめに探せば、読みたい本のタイトルが決まっていなくても、興味のある本に出合うことができる。
小学生のころは、海外に憧れ、海外文学の棚を左から右へ全部読んでいた。小学生がドストエフスキーやディケンズを理解していたのかは怪しいが、描かれる海外の描写や人々にときめいていたのを覚えている。
今ではめっきり、女性史、ジェンダーの棚がお気に入りだ。
本を読むことにもいろいろな目的があると思う。知識を得たり、これまでの研究者の知恵を借りたり、特定の研究の基礎を固めたりする「学問」としての読書もあるだろうし、海外に憧れて海外文学を読んだり、旅行ガイドでいろいろな国を知ったり、How to本で料理の仕方を覚えたりといった「教養」としての読書もあるだろうし、少女小説、ロマンスなどのキャラクターにはまる「オタク」的な読み方もあるだろう。どんな読書でも、全ての人が手に届く状態にしてくれるのが図書館の魅力であり存在意義だと思っている。